競馬は時に残酷だ。誰だってそうだろうが、レース中に競走馬が故障するシーンに遭遇すると、胸が苦しみで覆われ、つらく、やるせない気持ちになる。7月30日の新潟11R・関越Sの直線で、グレートマジシャンが故障を発症。何とか命が助かってほしいと願ったが、残念ながら、予後不良の措置がとられた。

 昨年の日本ダービー(4着)以来、1年2カ月ぶりのレース。右前脚に不安を発症したのが休養理由だが、今回、命を奪ったのも、その箇所のケガ。繋靱帯が切れてしまい、手の施しようのない状況だった。

 今回初コンビだった福永は、足元のことを考えて、極力、負担のないよう騎乗していた。手応え良く、直線に向いてからも、歩様に乱れがないかを確認しながら、慎重に追い出したという。それでも、グレートマジシャンの右前脚は耐えられなかった。

 ただ、相当な激痛だったはずなのに、振り落としたり、転倒することはなかった。「本当に、よく立っていてくれた」。複雑な思いを抱えながらも、福永は感謝の言葉を口にしていた。

 3戦目の毎日杯。福永はそのレースのパドックで、グレートマジシャンの馬体を見て「めちゃくちゃいい馬」と絶賛していた。初めてまたがった返し馬での感触は、「いい馬だなと思ったよ」―。ケガがなければ、間違いなく大成していただろう。それだけに関係者の方々の心痛は、察するに余りある。今はただ、グレートマジシャンの冥福を祈りたい。


ほんま悲しい