試合に出ないなら、スポーツではない  「試合に出ない野球選手」を生み出す背景にも甲子園の存在がある。甲子園大会は春も夏も、その他の大会も「一戦必勝」のトーナメントだ。

 1試合も負けられないから、毎試合エースを起用し、ベストメンバーを組むしかない。怪我、故障がない限り控え選手は出場機会がない。
予選や春秋の県大会も同様だ。エースの酷使、レギュラー選手の消耗を生む一方で、大量の「出場しない選手」も生み出しているのだ。

 「いや、試合に出るだけがチームへの貢献ではありません。声援を送る、試合に出る仲間に飲料を運んでやる、練習相手になってやる。それも立派な野球です。私はそういう選手の親御さんに『息子さんは3年間立派に頑張りましたよ』というんです」
ある監督は平然とそう言った。

 筆者は思わずその顔を見返したが、選手や親の中にはそれで納得する人もいるのだ。いかにも日本らしい風景だと思う。