本拠地、オールド・トラッフォードで迎えたリヴァプール戦
GKデヘアが大量失点、攻撃陣も勢いを見せず惨敗だった
スタジアムに響くファンのため息、どこからか聞こえる「今年は100敗だな」の声
無言で帰り始める選手達の中、昨年のチーム得点王ロナウドは独りベンチで泣いていた
レアルマドリードで手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるチームメイト・・・
それを今のマンチェスターユナイテッドで得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」ロナウドは悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、ロナウドははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰ってトレーニングをしなくちゃな」ロナウドは苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、ロナウドはふと気付いた

「あれ・・・?お客さんがいる・・・?」
ベンチから飛び出したロナウドが目にしたのは、外野席まで埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのようにThe Red Devilsの応援歌が響いていた
どういうことか分からずに呆然とするロナウドの背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「クリスティアーノ、守備練習だ、早く行くぞ」声の方に振り返ったロナウドは目を疑った
「す・・・スコールズさん?」 「なんだロニー、居眠りでもしてたのか?」
「ギ・・・ギグス監督?」 「なんだロナウド、かってにギグスさんを引退させやがって」
「ファーディナンドさん・・・」  ロナウドは半分パニックになりながらスコアボードを見上げた
1番:ファン・デルサール 3番:エヴラ 5番:ハーグリーブス 5番:ファーディナンド 6番:ブラウン7番:Cロナウド 
10番:ルーニー 16番:キャリック 18番:スコールズ 32番:テべス
暫時、唖然としていたロナウドだったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ!」
ファーガソンからボールを受け取り、グラウンドへ全力疾走するロナウド、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・

翌日、ベンチで冷たくなっているロナウドが発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った