控え左腕の急成長で見えた近江の方程式
5/29(日) 8:10

<春季近畿地区高校野球大会:大阪桐蔭11-2近江>◇28日◇準決勝◇紀三井寺運動公園

 2番手としてマウンドに登ったのは星野 世那投手(3年)。センバツで毎試合完投して勝ち上がった山田の姿を見ている高校野球ファンにとっては、最後まで投げるイメージはあったかもしれないが、実はもともと星野は7回から登板する予定だった。

 近江にとっては投手陣の「山田頼み脱却」が一番の課題。その克服に向けて動いたのが、山田本人だった。今年の投手陣で山田に次ぐ実力を持つ星野を7回からリリーフとして起用することを多賀監督に提案していた。多賀監督は「山田自身、今の山田頼みの投手陣をなんとかしたいと思ったのでしょう」

 継投策というのは、監督主導で決められるものだと思ったが、そこに選手の考えが入ることに驚きだったし、それを受け入れ、許可した多賀監督も素晴らしい。もちろんそういう起用ができるのは、星野のセンバツ後の成長が著しかったからだ。

 右腕のグラブを高々を掲げ、真っ向から振り下ろす投球フォームで、直球は常時130キロ前半~139キロを計測。力で押すことができるようになった。110キロ前半のスライダーや90キロ台のカーブを織り交ぜ、緩急を使った投球もできる。何より、表情、攻めから大阪桐蔭の打者に立ち向かっていく姿勢が感じられたことだ。センバツが終わり、多賀監督からも山田頼み脱却へ向けて、奮起を促す話をもらっていた。

 なにか変えなければならないと決めた星野は日々の投球練習の取り組みを変えた。

「常に実戦を想定することを意識しました。打者、カウントを想定して、試合を意識した投球ができるようになったと思います。今までは焦ることはあったのですが、焦りそうになったら深呼吸をして落ち着かせることもできるようになったと思います」

 県大会、近畿大会で安定した投球を続け、今ではリリーフについても「得意です」と語るまで自信が持てるようになった。この日は8回表、相手4番・丸山 一喜内野手(3年)に勝ち越し本塁打を浴びてしまった。この点について「甘い球ではなく、ストレートも悪くなかったです。ただストレートと分かってしまうような配球の仕方が反省点です」

 それでも集中打を許さなかった。以前と比べても十分に渡り合えるレベルになっていた。最終的に2対11と大差をつけられてしまったが、多賀監督も「着実に差が縮まっている」と語るように、7回まではどちらに転ぶか分からない試合展開だった。