あれはもう10年も昔の事だがねぇ
私は信州の安曇野という所に旅をしたんだぁ・・・
バスに乗り遅れて、田舎道を一人で歩いてるうちに
日が暮れちまってね暗い夜道を心細く歩いていると、
ポツンと一軒家の農家が立ってるんだぁ
りんどうの花が庭いっぱいに咲いていてねぇ
開けっぱなした縁側から明かりのついた茶の間で
 家族が食事をしてるのが見える
 まだ食事に来ない子供がいるんだろう
 母親が大きな声でその子供の名前を呼ぶのが聞こえる
 私はね、今でもその情景をありありと思い出す事が出来る
 庭一面に咲いたりんどうの花
 明々と明かりがついた茶の間
 賑やかに食事をする家族たち
 私はその時、それが・・・
 それが本当の人間の生活ってもんじゃないかと
 ふと、そう思ったら急に涙がでてきちゃってねぇ
 人間は絶対に一人じゃ生きていけない・・・さからっちゃいけない
 人間は人間の運命にさからっちゃいかん
 そこに早く気がつかないと不幸な一生を送ることになる
 わかるね・・