■智弁和歌山前監督 高嶋仁の目
(18日、第104回全国高校野球選手権大会準々決勝 大阪桐蔭4-5下関国際)

 下関国際の選手は、春夏連覇を目指す大阪桐蔭に対しても、気後れしていませんでした。気持ちの強さを感じました。
 大阪桐蔭の前田悠伍君に追い込まれたら、そうそう打てるもんではありません。ストライクをとりにくるボールを、いかに打つことができるか。
 緊張する場面でも、しっかりバットを振る。その心意気が素晴らしかった。しかも、赤瀬君も賀谷君も、センター返しという打撃の基本に忠実だった。とくに好投手を攻略するには、この打撃が一番なんです。

 下関国際の坂原秀尚監督は試合前、「どうやって点をとるかばかりを考えている」と話していたそうです。それでええんです。野球は点をとらんと勝てんのです。監督の積極的な気持ちが、選手の背中を押しているように感じました。

リードした九回のマウンドでも、守りに入るような様子はありませんでした。しっかり腕を振って投げているから、大阪桐蔭の打者も少しだけ差し込まれ、打球にあとひと伸びがありませんでした。見事な勝利でした。

 これが高校野球ですね。大阪桐蔭はこの苦しい試合をものにしたら、頂点まで駆け上ったように思います。でも、野球に絶対はありません。まして、高校生ですから。

負けはしましたが、大阪桐蔭は間違いなく王者やったと思います。強い大阪桐蔭をどうやったら倒せるか。みんな考えて努力して、うまくなったんです。
 ぼくが駆け出しの監督だった時代は、PL学園がそういう存在でした。スクイズで1試合に5点とられたことがあるんです。当時はそんなになかったセーフティースクイズです。練習試合でしたが、次は絶対に勝ったると心が燃えたのを思い出します。

 下関国際も、大阪桐蔭のおかげで、こんなに素晴らしいプレー、試合ができたんやと思います。試合後のインタビューで賀谷君は泣いてました。大阪桐蔭に勝つということは、そういうことやったんやと思います。(前・智弁和歌山監督)