――プライベートで、他のアニメ作品を見たいとは思わない?

富野:
結局、見るのは仕事のためを意識して見てますし。そういうご質問に対しては、『となりのトトロ』って作品は、かなり好きだし、名作だと思ってますけど。それ以外に、そんな好きなアニメや映画があるかって言われると、あんまりないですね。どうしてかっていうと、こう作るんだったら、こう作るぞ、っていう対論が出てくる気分があるからです。

――『となりのトトロ』は、なんで好きなんですか?

富野:
なんていうのかな、監督でもあるし、ストーリーそのものも宮崎駿さんが作ってるんだけど、かなり自然体で作れた。なおかつ、アニメーター出身の演出家の、気負いのない作り方っていうのが見えていて。作りとして、極めて素直で、作為が見えない。まあ、多少はあるんですけどね。それはさておいて、このくらいにスルッと作れたら、良いんだけれどもな、この芸がなかなか……。それで、簡単に見えるわけです、作品的にも。「これが出来ないんだよね」って。
これは、宮崎監督自身も、意識してそういうふうに楽に見えるように作れたかというと、きっとコネコネやったんだろうなって、想像つくのもあるんで。
かなり、作品としては理想的な、手描きアニメの佳作として、極めて長いあいだ残る作品だと思っています。