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谷口悟朗監督は『ONE PIECE』という作品をどのように見ているのか? 2つのポイントから語る

ー『FILM RED』にも通じる話ですが、『ONE PIECE』は「王道少年漫画」であることをすごく大事にしている作品でありながら、考察を呼ぶ描写や伏線が無数に散りばめられたディープな作品であり、
「自由」と「支配」という構図で現実社会をある種批評しているような骨太な作品でもありますよね。監督ご自身は『ONE PIECE』という作品をどのように見ていらっしゃるのでしょうか?

谷口:ひと言で言うと、『ONE PIECE』という作品世界自体はルフィがいなくても世の中が動くってことですよね。そこがすごいところだと思います。
海賊は勝手に暴れているだろうし、今日もただ日が落ちて次の日に日が昇ってくるだろうし、海軍は海軍で働いているだろうし。
少年漫画って構造としては、世界の端っこにいる少年が世界の中心に向かっていく姿を描いているんですよ。
これをするためには、その少年がいなくてもその世界を静止させたらいけないんです。それができていることがまずすごい。普通はどうやっても、その少年の能力ありきの世界になっていっちゃうんですよ。

ールフィが見たものだけで作品ができているのではなく、『ONE PIECE』という世界がまず成立していることがすごい、と。

谷口:そう。ルフィのいない空間でもこの世界は広がっているし、進行している。「マキノさん(※)の赤ちゃんは一体どこからきたの?」みたいな想像を読者が膨らませられるように、本筋で描かれているところ以外の世界も進んでいるんです。
だからこそ、お客さんはルフィだけにこだわる必要がない。好きなキャラクターがいたらそこから入ることができるし、それが海賊でも海軍でもいいという。それをひとりの男が、人生のなかでつくりあげちゃったことがすごいと思います。