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 今シーズンのセ・リーグに突如出現した大砲・村上は、「木こり」である。

 これは村上獲得に尽力した、あるスカウトの言葉である。

「スカウトの世界では、地方の無名のスラッガーのことを『木こり』と呼んだりするんです。誰にも知られず、山の中でひとり木を切り倒しているようなホームランバッターを探してくることがスカウト冥利というか。さすがに情報が氾濫しているこの時代ですから、村上のことは他球団もよく知っていましたが、潜在能力をどれくらいの人がわかっていたか。スカウトの立場で言えば、スカウト生命をかけて1位指名してもらいたい。そういう逸材でした」

 九州学院高校時代、甲子園に出たのは1年の夏のみ。ヒットは無し。知る人ぞ知る逸材はぐんぐん力を伸ばしていき、やがて熊本の「木こり」はドラフトで1位指名を受けることになった。

 そして、二軍でひたすら実戦経験を積んだ1年目を経て、2年目の今シーズン、満を持して一軍の舞台に登場したのである。

 ちなみに村上と同世代で最大のスターと言えば日本ハム・清宮幸太郎であり、広島・中村奨成やロッテ・安田尚憲もいる。ヤクルトも清宮の抽選に外れて、村上を1位指名し、3球団競合の末に獲得したという経緯がある。それが蓋を開けてみれば、ホームラン16本はリーグ4位、48打点はリーグトップという活躍。清宮ら同世代の中で最も早くスターダムに躍り出た。

無名の村上を発掘したスカウトの手柄やぞ