「いや、一朗のユニホームだけは、ずっと真っ白でした。高校時代の彼は、とにかく誰よりも練習をしなかったんですから」

 当時の呼び名は「イチロー」とはアクセントの異なる名古屋弁での「一朗」。上級生がいる1、2年生までは全体練習に参加していたが、夕食後の自主練習はしたことがない。3年生では全体練習すらまともにやらず、姿を消していた。高田が言う。

「僕らが泥だらけになっているころ、最後のメニューのベースランニングに、一朗がまたやってくるんですよ。猛スピードで20周走ったら、寮に帰って一番風呂や」

 練習していない間、一朗は何をしていたのか。高田が本人に聞いたら、「トレーニングルームで昼寝したり、寮で新聞や雑誌を読んだり」という答えが返ってきた。

全然しごかれてなくてくさ