試合中、ベンチの中で遠くを見たり、ひとりで悔しがったりする光景を最近はよく目にするようになりました。巨人の原(原辰徳)監督です。今年は本当に厳しいシーズンの戦いを続けています。2年連続で首位に大きく差をつけられてしまっています。

【選手データ】原辰徳 プロフィール・通算成績

 2年連続でといえば、巨人は一昨年、日本シリーズでソフトバンクに2年続けて0勝4敗というスイープを喫しました。そのときの負け方によく似た負け方が続いています。

 これは采配が云々ではなくて、編成の問題だと私は思っています。私は編成も担当しましたし、1年間だけでしたが一軍の監督も経験させてもらったからこそ分かる部分です。多分、原監督は現在ひとりで戦っている感じだと思います。

 というのも監督というのは視野を360度、ときには720度を見渡しているものです。攻撃のときも守備のときもずっといろいろなことを考えています。それだけ視野を広げていますが、すべてを把握できない部分もあります。そこで大事になってくるのが、戦略を練る専門家の部分です。

 1試合の流れで言えば、今日の試合展開は、という戦略を練って3から4つの案を監督に提案しないといけません。つまり、いろいろなことを考えて采配を揮(ふる)う監督に、判断の選択肢の幅を広げてもらうための準備が必要なのです。

 もちろん、その戦略を監督に押し付けてはいけません。あくまでも指揮権は監督なのですから。その意味でも私はヘッドコーチには元監督経験者をつけるべきだなと思います。

 元木(元木大介)ヘッドコーチや阿部(阿部慎之助)作戦兼ディフェンスチーフコーチには、もっと監督のそばにいて、戦略の幅を広げられるような提言をしていくべきだと思います。

 もう一つは、選手構成での編成が機能していないのではないかという点です。一軍登録枠は28人。実は二軍でも同じような構成の28人が必要なのです。例えば一軍のレギュラー遊撃手が28歳だった場合、二軍では21歳の遊撃手を作っていく。それで世代交代もうまくいきますし、一方で、仮にその遊撃手のレギュラーが新型コロナやケガで離脱したときに、その二軍の21歳の選手を起用していくことができます。

 そういう未来を見据えたチーム編成でミスが出てしまうと、なかなか世代交代がうまくいかないチームへとなっていきます。そういう失敗をなくすためには、優勝できなかったシーズンをしっかり反省し、何が失敗の原因だったのか、という編成部分での分析が本当に大事になってくるのです。

 その意味では、巨人はここ数年、その分析がうまくできていないのではないのか、と疑ってしまいます。まず、現在の緊急対処法は、とにかくコーチ陣が原監督をひとりにしないことです。しっかり戦略を練って提案をしてほしいと思います。