「そこまで思い詰めているとは・・・」 ”投資”に150万円支払った22歳女性 死を選んだ「なぜ」(1)
https://news.yahoo.co.jp/articles/69b7931b15aa9eee86a4bdbe9cfb144862fa680a

「なぜ彼女は150万円を背負って自ら人生を終わらせてしまったのか」

 取材は、この疑問と向き合い続けた時間だった。大阪府の川上穂野香さんは2020年10月1日、大阪市内のホテルで自殺した。22歳だった。直前まで当時の交際相手と大分や京都に旅行に行っていた。
母親の佐永子さん(55)も「そこまで思い詰めているとは気づいてあげられなかった」と悔やみ、涙を落とした。

 始まりはその年の8月下旬。大学を出て社会人として働き始めたばかりだった穂野香さんの大学の同級生が「投資に興味ある人!」と書き込んだインスタグラムだった。懐かしさもあったのだろうか、穂野香さんが返信すると、同級生は男を紹介した。

8月28日、穂野香さんは同級生と男が入ったLINEグループに入れられた。男は「初月130万、2ヶ月目660万、3ヶ月目1200万(稼いだ)」「何もしなくてもお金が入ってきます」と畳みかけた。

LINEで「今すぐに決定したい訳じゃなくて」と送る。だが、男は「9月1日まで入金の方はレバレッジ4倍」「今やるのを強くおすすめしております」と返す。レバレッジとは、自分が預けた金を「保証金」としてその何倍もの取引ができる方法だ。利益が出た場合は大きいが、損失も莫大になる。

男は「アービトラージと言う先物取引」で「約40%を月利として分配」などと数字や根拠不明な言葉を使いながら大量のメッセージを送り、穂野香さんを追い込んでいく。

驚いたのは、投資のための金策まで男が指示していたことだ。具体的な消費者金融会社の名前を出し、「一日で終わらせな信用情報回ってまうから借りられない!」「借入理由は引っ越しで」などと具体的に説明する。
穂野香さんは結局、消費者金融3社から計150万を借り、100万円を男の口座に送金し、50万円は現金で男に手渡した。LINEのやり取りから4日後のことだった。

自殺はそのちょうど1カ月後だ。
私は男と穂野香さんの100を超えるLINEのやりとりを何度も見返した。「暗号資産への投資」をうたう男の言葉はあいまいで、暗号資産の仕組みすら理解できていない様子だった。

穂野香さんも、完全に納得したというより、追い立てられるように「投資」を決めてしまったように感じた。当時、穂野香さんが説明を聴きながら残したとみられるメモには「デメリットは正直ない」と書かれていた。