めったなことではうろたえず、どっしり構えているのが、ベテランの風格というもの。
なぜそうできるのでしょう?

ドン23話『イヌ、いぬになる』。
イヌブラザー出ずっぱり──なんて台本が降ってきて、現場はパニックのるつぼに。
とくに戦々恐々だったのは、L合(LIVE 合成)チーム。
「ふだんより時間かかります。最悪、PCが熱暴走して撮影止めてしまいます!」
撮影に帯同し、リアルタイムにCGを生成することで、現場と一体化するのが、L合のだいごみ。
そのぶん、何かあったら一蓮托生で現場全体を巻きこんでしまう……という責任を背負ってもいたりします。

ただひとり、冷静沈着だったのが渡辺勝也監督。
「このカットはCG、このカットはギニョール」
テキパキと指示し、あれだけ怖れられていたイヌ出ずっぱりの撮影も、日ごろよりむしろスムースに進む始末。

「時間かかるのは、顔出しの芝居のほうです」

きょとんとするスタッフをよそに、渡辺監督はすずしい顔。



次回ドン29話『とむらいとムラサメ』は、ソノイのお葬式のお話。

舞台となるのは、脳人(ノート)の世界イデオン。これまでセリフでしか出てこなかった元老院も一部登場。

「全編異世界か……どう描写すれば……」
「新しいアセット(CGセット)をつくる時間はないぞ……!」

企画陣が上を下への大騒ぎにおちいるなか、落ちつきはらっている諸田敏監督。

「ここはこう撮るから、こう書き直してよ」

脚本の井上大先生に具体的な指示。監督の脳内には、すでにビジョンができあがっているのでした。