2年連続最下位から優勝へ。奇跡のV字回復を果たした今季、選手たちに、メンタル面の変化はあったのだろうか。最後に、森岡コーチがこんな秘話を明かしてくれた。

「今年のキャンプの時、みんなの前で、どんな時も表情を気にしよう、という話をしました。去年は最下位で、シーズンの最後の方はみんなの顔がいつも辛そうだった。コロナ禍で球場にお客さんが来られず、試合をテレビで見る人も多いのに、そんな顔が大写しになることが気になりました。見ている人に対しても失礼で、凄く嫌だったんですよ。メンタル面がぐっと落ちていると、顔に出る。逆に顔からメンタル面を上げていくことも出来るはずなんです」

 姿勢をスッと正す。うつむかず顔を上げる。“への字口”ではなく、口角を上げる……。ファンに見られている「表情」の変化が、「心」を変え、「行動」を変えていくこともある。

「姿勢や自分の発する言葉から、どんどん変えて行こう。そうしたら前向きに、いい方向にいくんじゃないかって。ミスして笑うのは違うかもしれませんが、下を向いているよりは、ぐっと表情を引き締めたりとかね。今年は哲人も凄くいい顔をして野球をやっていましたから。チームも勝ちだして、優勝に向けてどんどんみんながいい表情になっていったのが本当に嬉しかった」

 阪神、巨人とのデッドヒートの中でも試合ごとに逞しさを増し、一気に頂点へ駆け上がったスワローズの選手たち。生き生きとした表情と躍動の陰には、こんな意識改革もあったというわけだ。

これは有能コーチ