これもう純愛やろ

当時、九州地区担当だったオリックスの山口和男スカウトは、胸の鼓動を抑えきれなかった。
絶対に欲しい。
「投手として必要なものを全て持っていた。フォームやバランス、球質、ベース盤の強さ…。高校生なのに、もう1軍半レベルの力は持っていると、僕は思いましたね」。
絶対に欲しい。いや、獲らなければ。
何度も「山本由伸」の顔が頭に浮かんできた。

「2巡目くらいで行ってほしい。4巡目では、いないかもしれません」。スカウト会議で訴えたことも、今は良き思い出となっている。

2月に都城高校のブルペンで見たときから、確信めいた衝撃があったという。
そこからは試合で見る度に確信に変わっていった。
欲しい。
けど、思い通りに行かないのがドラフトだ。獲ろうとしていた選手を1つ前の球団に指名されることなんて、ざらにある。
運を天に任せた、あの日。
果たして、4巡目に「山本由伸」は残っていた。縁があったのだ。