こうした中、違和感を覚える点がいくつもあった。最たるものが職人たちの姿だ。

 茶髪のみならず、パンチパーマやアイパーという清潔感のない髪型や服装をしている者が多く、地元では、ヤンキー風の人間が歩いていると「あれは船橋屋の人間だ」と言われるほど。どんなときもスーツでパリッと決めてきた元銀行員にはとうてい受け入れられなかった。

「現社長が来られたころの船橋屋は工場で10数人が働く程度の小規模の会社でした。職人たちには『いいものを作るんだ』『俺たちが会社を支えてる』という気概はありましたが、昼休みになれば麻雀大会は当たり前。午後も仕事が早く終われば日の高いうちから飲みに行くのが普通で、20代だった自分も『こんなのでいいのかな』と感じることがありました。現社長は年齢の近い私に『職人さんは何を考えてるのかな』『雰囲気はどう』と聞いてくることもありましたけど、最初はじっと黙って様子を見ている感じでした」

社長だけでなく会社自体がアレな感じなんやな
起こるべくして起きた事件やったんやね