ゼレンスキーも当初見誤っていた「外交の本質」

「話せばわかる」が裏目に出たゼレンスキー

――「腹を割って話せばわかる」というのは幻想ですか。

【倉井】「話せばわかる」は、まさにゼレンスキー大統領が就任当初、対ロ外交で信条にしていた姿勢です。彼は2019年5月に大統領に就任しますが、その前の大統領選挙のキャンペーンの頃から、ゼレンスキーの発言からは「自分とプーチンが二人で話し合えば問題は解決する」と考えていた節が見受けられます。おそらくプーチンはそれを見て、「与しやすし」と思ったのでしょう。だから時にはゼレンスキーにアメを与えるようなこともしてきました。

しかし、ゼレンスキーが「話せばわかる」と思ってやってきたことは、結果的にすべて裏目に出ました。こちらが先に譲れば相手も譲歩するだろうと思いきや、一歩譲れば逆に向こうはさらに一歩踏み込んでくるということを、ゼレンスキーは身をもって知ったのです。2019年から2020年にかけて、特に夏以降はゼレンスキーもこのことに気づいて、対ロ政策をようやく転換しました。

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