子どもの頃に始めた野球が、運よく仕事になった。それが僕の人生だった。

 いざ野球をやめるかもしれないと考えたときに、今までにない不安に襲われた。大げさかもしれないが、荒れた大海原に何も持たずに投げ出されるような恐怖感に包まれた。

 今まで野球しかしてこなかった自分が、本当にこの先、ほかの仕事で生活していけるのだろうか?

 こう思う選手は、多いのではないだろうか。

「野球を辞めたら何の仕事する?」

 選手同士でプライベートで食事をする際、よくそんな会話になる。プロ野球選手には、いつまでも現役でいたいという気持ちと、いつか辞めた時の不安を持っている人が多い。

 確かに引退した翌年から違う仕事になった時は、いろんな壁にぶつかった。

 でも思い返せば、野球をしている時から同じだった。この壁を乗り越えたら、今より成長した自分になれる。

 野球の仕事も、それ以外の仕事もベースは同じだ。小さい頃から長くやってきた野球に置き換えて考えると、わかりやすい。

 誰でも、最初からなんでもできる人はいない! 野球でも、今はできないことができるようになるために、毎日練習する過程は一緒だ。

 現役生活をやめて次の仕事を始めた人は、当然、壁にぶつかるだろう。

「今、自分がぶつかっている壁は、野球選手だった頃のあのときの経験に似ている。当時は、ああやって乗り越えたな。よし、今回もこういうことに気をつけてやっていこう!」

 野球で培った経験は必ず、違う仕事でも活用できるはずだ。