誉はこの時からフィジカル強化を徹底的にやるチームに移行していた。グラウンド下の雨天練習場には手作りのウエートルームがあり、器具を装備している。エルゴメーター、1キロ以上の縄跳び、ボックスジャンプ、パルクールトレーニングなど筋力アップだけではなく、アジリティ系や、身体操作系のトレーニングなどあらゆるメニューをこなす。

 イヒネは最初はかなりきつかったと振り返る。それでも必死に食らいついていくうちに、打撃も、守備も伸びていった。寮に入り、食事を多めに摂った結果、入学当時、67キロだった体重が、83キロまで増量。プレーも力強くなり、「中学の頃は力も全然無くて、そんな飛ぶようなバッターではなかったので、だいぶプレースタイルが変わりました。フィジカル練習をやってきたこともあり、肩もかなり強くなったので、よかったと思います」と実感もある。

 他の選手と比べても体つきが違う。誉の選手たちは下半身が太い選手が多い。対照的にイヒネは遠目で見ると細いように見えるが、間近で見ると、ハムストリングスが大きく発達。陸上競技で活躍するアフリカ系アメリカ人選手のような筋肉の発達具合だった。脚力も高くなった。誉では30メートル走を導入。電動計測でチームの平均は4.1秒だが、イヒネは3.9秒を計測している。チームメイトの誰もが「ベースランニングはめっちゃ速いです」と口を揃える。そのスピードを生かし、高校2年から遊撃手がメインとなる。

「最初は分からないことがいっぱいあって、難しかったのですが、覚えてきて、動けるようになりました」

 長い足を生かし、三遊間の深い位置に追いついたり、二塁ベース寄りの打球にも颯爽と追いつく。その動きは軽やかだ。守備面で意識することについて、イヒネはこう語る。

「指導者の方からはグラブさえ地面につけば、落としすぎる必要はないと言われたので、それを意識して練習しています」

 その意識で守備を上達させることができた。

イヒネはウェートでまだまだ身体デカくできるやろ