2008年の小関先生

◇広島カープ75点
 相思相愛の岩本貴裕(亜大・外野手)は大学野球の最高峰、東都大学リーグで通算16本塁打を放ったスラッガーである。さらに、亜大のキャッチフレーズ「全力疾走」を不徹底ながら実践しており、広島のチームカラーと合致する。ただ、1年目からの即戦力か、と聞かれれば首を傾げる。それはボールを捉えるタイミングを完全にモノにできていないからだ。今の岩本は素質のよさだけでボールを打っている段階。1年目はかなり苦労すると見ている。

 2位の中田廉(広陵・投手)は今夏の甲子園でストレートが大会ナンバーワンとなる148キロを記録して注目された本格派右腕。左肩の開きが早く細かなコントロールに難があり、右打者の内角に腕を振って投げ込めないという弱みはあるが、高校卒は5年くらいのスパンで成長を見守るというのがプロの基本的なスタンス。高校卒の前田健太、大竹寛を入団2、3年目に主力にした広島にとって、中田の本格化はそれほどの難事業ではないだろう。

◇ヤクルトスワローズ65点
 1位の赤川克紀(宮崎商)、2位の八木亮祐(享栄)、4位の日高亮(日本文理大付)はともに高校球界を代表する本格派左腕だが、石川雅規、村中恭兵という主力左腕がいて、実績こそ乏しいが期待されている加藤幹典、高井雄平、丸山貴史という若手左腕もいる現状を見れば、左腕にこだわりすぎたと思う。

 補強が急務な捕手は3位・中村悠平(福井商)、5位・新田玄気(パナソニック)を指名している。川本良平、福川将和、米野智人の既存戦力に決定力がないから「補強が急務」と言ったわけだが、2人の新人が早い時期に彼らを上回ることができるのかと言われれば首を傾げざるを得ない。競合覚悟で大野奨太を1位指名するくらいの冒険心があっていいと思った。

◇横浜ベイスターズ60点
 投手不足は誰の目にも明らか。シーズン中に真田裕貴(巨人)、石井裕也(中日)の2投手をトレードで獲得し、代わりに鶴岡一成(捕手)、小池正晃(外野手)を交換要員で放出した。そして、2人の放出によって生じた穴を松本啓二朗(早大・外野手)、細山田武史(早大・捕手)で埋めようとしたのが今回のドラフトである。これは非常に不可解で理解に苦しむ。1位・松本はリーグ通算105安打、ベストナイン5回、4位・細山田はベストナイン4回受賞という一級の実績を残している。東京六大学、東都大学リーグで傑出した成績を残した選手はプロに進んでも成功の確率が高いというデータは横浜球団には心強いだろう。それでも低い得点にしたのはあくまでも戦略的な物足りなさのためである。