長身で細身のイヒネは打撃は平凡だが快足と守備は敵なしだった。運動会のリレーのアンカー走者としても無双。その姿もあって当時のコーチと小5から左打ちにさせた。正解だった。

 「一塁出塁から3球あれば三塁にいた。二盗は100%セーフの1番ショートでした」

 守備範囲も規格外だった。二ゴロ、左前打、中前打になりそうな当たりをいずれも遊ゴロで処理した。愛知県学童リーグの大会で優勝経験もあったが16強止まりが多かった。ただ「あそこに打ったらおしまい」と敵チームは攻撃時に“イヒネゾーン”を区画化した。中学の硬式クラブ関係者が勧誘を兼ねて他チーム選手の視察に訪れては、その動きに首ったけになっていた。

 投手もイヒネに任せたがセンスで打者も封じた。「柔らかい手首でくせ球、ナチュラルムービングを操った。送球と違う直前でクッと曲がる気持ち悪い球を投げていた」と回想する。

すごい