東北の隠れキリシタンたちの間に伝わる人類の起源説話


そもそも "でうす"と敬い奉るは
天地の御主 人間万物の御親にてましますなり

はじめに 天地万物を つくらせたまい
また 土より五体をつくりて人となし
これ "あだん"と"じゅすへる"のふたりなり

"ぱらいそ"に二本の天の木あれば かならず
食うことなかれと "でうす"かたく仰せあるを
"じゅすへる" "あだん"をたばかりて
"あだん"は"まさん"の木の実をとりて食い
"じゅすへる"は"いのち"の木の実を食しける

これより たちまち天の快楽をうしない
"あだん" その妻"えわ"と下界に追いやられ
畜生を食し 田畑を耕してまいるべし

また "じゅすへる"の子ども 死ぬことなく
生みふえれば "でうす" これを憂いたまいて
地をひらいて "いんへるの"に落としたもう

その子孫 わずかに人からかくれ住み
"いのち"の木の実の功力にや 死ぬこと
なしといえども "でうす"の呪い受けたれば
順次に "いんへるの"にひきこまれ
子し孫そん 地の底に身をもがき
"きりんと"参る日まで 苦しみつきざるというなり