景観を台無しにして散策を味気ないものにする電柱や電線を見えなくすれば、大阪の街を世界にアピールできる。ところが国土交通省によると、大阪市の全道路延長に占める無電柱化率は2020年度末で

「6%」

となっている。これでも特別区・政令指定都市で2位というから驚きだ。トップの東京23区は、東京五輪に合わせて都道の無電柱化を推進したにもかかわらず、8%にとどまっている。

 特別区・政令市で5%に達しているのは、ほかに名古屋市だけ。残りは1~3%台でしかない。それ以外の市町村になると、兵庫県芦屋市のように市道の14%以上を無電柱化した例外があるものの、大半はほとんど手つかずに近い状態だ。

 これに対し、海外の主要都市はロンドンやパリ、シンガポール、香港が既に100%に達しているほか、台北も96%まで整備が進んだ。東京23区や大阪市の現状は、

「ガラパゴス状態」

といえる。

 日本の道路総延長は約120万km。国交省は2021年度から5年間で約4000kmの無電柱化に着手する計画を打ち出している。年間にすると約800km。このペースで整備が続けば、「120万km÷800km」の計算式で、すべてが無電柱化されるのは

「1500年先」

になる。1500年前といえば古墳時代の終わりに当たる。日本にようやく古代国家が形成された時代から今までと同じ歳月を費やさなければならないと考えたら、気が遠くなる。

 第2次世界大戦後、東京や大阪と同様にロンドンも焼け野原から復興を始めた。東京や大阪が低コストを優先し、電柱を建てて電気や電話線を通したのに対し、ロンドンは戦前から電線を地下に埋設していたこともあり、無電柱化の道を選んでいる。そこに見えるのは

「景観に対する意識の差」

だ。

 工事にかかる予算を考えれば、気が遠くなるほどの時間がかかることに変わりないが、日本人全体が都市景観の大切さに気づかなければ、いつまでたってもガラパゴス状態から抜け出せそうもない。

https://news.yahoo.co.jp/articles/71f7638547cb0acbca6b55a7146ab62983371d99