79年のシリーズは広島に3勝3敗から敗れた。「江夏の21球」で知られる名勝負だった。80年の同じ顔合わせでも第5戦で先に王手をかけながら連敗。4勝目の難しさを嫌というほど味わわされた。オリックスは太田の先頭打者初球弾、完璧な継投で、この難関を克服した。中嶋監督の選手起用が光ったシリーズだった。

 自戒を込めて言うが、実績のある指導者はどうしても「何でこれができないのか」と思いがちになる。だが、下積みも長かった中嶋監督は自分の物差しで判断しない。できるように持っていく監督だと感じた。2敗1分け、そしてエース山本を欠く状況からの4連勝は見事だった。土俵際から盛り返した野球に浪速のド根性を見た思いだ。(本紙評論家)