デート当日、ステーキ店でメニューを見ながら、恭子さんが言いました。

「私はこれにします」

 選んだのは特上ランクのステーキでした。そこで、雄介さんも同じランクのステーキを頼みました。

 食事をしながら、お互いの趣味や仕事のことなどを楽しく話しました。会話は弾んでいたのですが、後半、恭子さんの食べるスピードが遅くなり、「もうおなかいっぱいになってしまいました」と、ステーキ1切れと少しのご飯を残したのです。

(ステーキはグラムで選べたのだから、その下のグラムを頼めばよかったのに。ご飯も残すなら、注文するときに「少なめにください」と言えばよかったのに)

 雄介さんは心の中で思いました。

 会計を済ませた雄介さんが外に出ていくと、既に店外に出ていた恭子さんが言いました。
「もう本当におなかいっぱい。少し散歩しませんか?」

 その提案に乗って、街をブラブラ散歩しました。すると、商店街にあった一軒のケーキ屋さんの前で、恭子さんが足を止めて言いました。

「ここ、すごく有名なケーキ屋さんで、テレビで紹介されているのを見たことがあります。シュークリームがすごく有名なんですって」

「そうなんですね。じゃあ、今度また来ましょうか。今日はおなかいっぱいでしょう?」

 すると、恭子さんは言いました。

「甘い物は別腹だし、せっかくの機会だから」

「えっ? じゃあ食べますか?」

「はい」