雄介さんは心の中で苦笑しました。

(「もうおなかいっぱいで食べられない」って肉とご飯を残したのに、甘い物は別腹って…)

 とはいえ、「食べる」という流れになったので店に入りました。そして、店自慢のシュークリームとコーヒーを注文したのです。

 恭子さんは「おいしい」と言いながら、それをペロリと平らげました。食べ終えて、雄介さんが会計をしていると、その横を素通りして店先に行き、何かを買っている様子でした。会計を済ませた雄介さんのところに、ケーキの小箱を手にした恭子さんがやって来て言いました。

カスタードクリームが絶妙においしかったので、家でも食べようと思ってお土産に買っちゃいました」

 無邪気にそう言う姿を雄介さんはかわいらしいとは思えず、心の中で言いました。

(僕に食事もシュークリームもごちそうになっておいて、自分の分だけお土産を買ったのか)

 何だか、思い切りしらけてしまったそうです。