私は案内の者に、
「あんなことをしていちゃあ美味く食えない。食ったところで肉のカスを食うみたいなもので、カスに美味い汁をかけているに過ぎない。ほかの客のはあれでよかろうが、こちらは丸ごと持ってこいと言ってくれ」
と頼んだが、案内人の荻須氏の言葉を聞いたボーイはただ笑っているだけで、ボーイ長に伝える気振りもない。重ねて、
「料理屋で、身銭を切って食べるのになんの遠慮がいるものか。こちらがお客だ。もっと堂々と言ってくれ給え」
そこで、私は生まれて初めてのお芝居をやった。案内人を通じて、
「このお客は日本の東京近郊に住んでいて、家の前に大きな池があり、その池に大中小の鴨を何千羽も飼っている。音に聞えた鴨の研究家で、鴨の食い方、鴨の料理にやかましい人だ。特に研究家としては有名だが『自分ではあの焼き方が気に入らぬ』と言っている」
と、通訳してもらった。
上手に言えたかどうだか分らないが、ともかく、存外素直に持って来た。果せるかな、半熟でちょうどうまい具合に処理してあった。
これでよし。私はポケットに用意していた播州竜野の薄口醤油と粉わさびを取り出し、コップの水でわさびを溶き、卓上の酢でねった。私の調理法がどうやら関心を買ったらしく、タキシードに威儀を正したボーイたちがテーブルの前に黒山のように並んで、成り行きいかにと見つめていた。敢えてうぬぼれるわけではないが、かかる格式を重んじる店で、こんな仕方で調理したのは前代未聞のことであろう。並んでいるボーイ連中の関心も当然のこととうなずかれる。
大岡氏は長らくニューヨークに滞在した後だったので、
「久し振りの日本の味だ。蘇生の思いがした。日本趣味のよさを改めて考えさせられた」
と、たいへんよろこんでいた。
なんか舐められてるから一発かましたったってだけだよな
ちなみにこの後酒が良くないと難癖つけて上等のブランデー集った
【悲報】美味しんぼの栗田さん「えっ、市販のカレールウなんて使うんですか?」
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417それでも動く名無し
2022/11/22(火) 12:34:27.25ID:O0UPGd4c0■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています