その他、赤い竜にはウェールズの多くの伝説がからんでいる。特に有名なものは魔術師マーリンによる赤い竜と白い竜の戦いの予言であろう。彼の予言では二匹の竜が長い戦いをし、最初は白い竜が優勢だが最後は赤い竜が勝つという。この最後の勝利とログレス王国の奪還は「約束された息子」(Y Mab Darogan)によりもたらされるという。これは5世紀から6世紀の、ブリテン島に侵入したサクソン人とケルト人(後のウェールズ人)との戦いを象徴するとされ、「約束された息子」が赤い竜たるケルト人を勝利に導き、白い竜たるサクソン人をブリテンから追い出すと信じられた。このマーリンの予言は古くはジェフリー・オブ・モンマスの偽史書『ブリタニア列王史』(12世紀)に語られており、類似のエピソードは前述の『ブリトン人の歴史』(9世紀)にもみられる。