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これやぞ

森保ジャパンの試合を見慣れているはずのこちらでさえ、
誰がどのポジションにいるか、選手交代のたびに混乱した。

南野はどこに入ったのか。鎌田はどこへ行ってしまったのか。
ノートに布陣を整理するまで、いつになく時間を要すことになった。

ピッチを俯瞰できないドイツベンチなら、なおさらだったのではないか。
その混乱ぶりは容易に想像できた。

想起するのはヒディンク・マジックだ。戦術的交代を駆使し相手を混乱に
陥れる采配を世に普及させたオランダ人の元韓国代表監督、
フース・ヒディンクが、2002年日韓共催W杯決勝トーナメント1回戦
対イタリア戦で見せた采配だ。

この時も、交代のたびに変化する選手の位置を把握するのに、
こちらは四苦八苦させられた。交代枠3人制で行なわれたにもかかわらず、
3度の交代で8つのポジションに変化を生じさせた采配だった。

イタリアはこの目くらまし戦法と言うべきマジックに大慌てした。
イタリアの敗因を誤審のせいにする人もいるが、
日本サッカーがなにより見習うべきは、ヒディンクの交代術だった。

今回の森保采配は、それに匹敵する采配だった。
選手交代5人制のメリットを最大限利用し、無理矢理、
風を吹かせることに成功した"凄み"さえ感じさせる交代だった。

杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki