こいつらが消えた理由って何?

バッファー・プレイヤーとは、戦後の日本政治において、自民党の政権担当能力を信頼し自民党政権を支持しているが、政局は与野党伯仲が望ましいと考え、自民党を大勝させないが政権から転落しないように投票を行う有権者(またはその投票行動)のことである。

1979年のから1990年までの国政選挙では選挙予測報道とは異なる結果が出ていた(ただし1986年の衆院選を除く)。例えば、1979年の衆院選の選挙前報道では「自民大勝」であったのに、実際には自民辛勝(与野党伯仲)の結果であったことや、1990年の衆院選の選挙前報道では「与野党逆転」であったのに、実際には自民党勝利であったことなどである。猪口孝と蒲島郁夫はこの現象に対して、一般性の高い仮説(バッファー・プレイヤー説)を提示した。バッファー・プレイヤー説の証明として「有権者はどの政党が政権担当適任政党と考えているか」、「支持政党別に有権者はどのような政局が望ましいと考えているか」といった点からの検証がなされた。前者では「自民党」が圧倒的であり、後者では自民党支持者の間でも「自民党の安定多数」よりも「与野党伯仲」を望む有権者が多く、野党支持者の間でも「与野党逆転」より「与野党伯仲」を望む有権者が多かったことでバッファー・プレイヤー説の妥当性が証明された。

バッファー・プレイヤーの投票行動は、自民党の一党優位が続く中、野党に政権担当能力が欠如していると判断した有権者が、自民党政権を存続させることで政治の安定を求め、一方で政局を与野党伯仲という不安定な状況に置くことで国民に対する自民党政権の応答性(responsibility)を求めるものであった。その意味で、マスメディアの報道を踏まえた有権者による合理的選択とも理解できる。