ある巡業の朝稽古で若い衆の申し合いが終わり、ぶつかり稽古が始まった。土俵の周りには本稽古に備えて関取衆が集まり始めている。そこには横綱・貴乃花もいた。その時、朝青龍は何を思ったか、貴乃花に向かって「おい、俺に胸出せ」と言ったというのだ。

 どこからどう見てもとんでもない暴挙。同じ一門ですでに朝青龍のことを知っていた曙が慌てて「俺が出す」と止めに入ったものの、朝青龍は「曙さんはいつもやってもらってるから違う人がいい」とごねた。もちろんそんなわがままが聞き入れられるはずもなく、ぶつかり稽古でぐちゃぐちゃにされて、どうにかその場は収まったという。

 彼らがそろって参加したとなると1999年の冬巡業あたりの出来事だろうか。普通ならありえない話だ。多くの関係者も「さすがにそれはないだろう」と首を振った。