7日目
12月14日(金)
事態の収拾のため、同信金が出した声明が曲解され、パニックに拍車が掛かる[5]。
払い戻し処理の迅速化のための措置を曲解した「1万円以下は切り捨てられる」「利子が払えないのはやはり経営がおかしいせいだ」「(雑踏警備をしている警察官を見て)豊川信金に強制捜査をしている」などのデマが流れる。「倒産整理の説明会をしていると聞いた」と問い合わせる者や、整理券を渡されて「こんなものをもらって何になる」と怒鳴る者が現れるなど、事態は深刻化する[6]。

その後、「職員の使い込みが原因」、「5億円を職員が持ち逃げした」、「理事長が自殺」という二次デマがさらに発生する[5][6]。信金側の依頼を受けたマスコミ各社は、14日の夕方から15日朝にかけて、デマであることを報道し騒動の沈静化を図る。新聞の見出しは、朝日新聞「5000人、デマに踊る[新聞 1]」、読売新聞「デマに踊らされ信金、取り付け騒ぎ[新聞 2]」、毎日新聞「デマにつられて走る[新聞 3]」、などである。

事態を受けた日本銀行は、考査局長が記者会見を行い、同信用金庫の経営について「問題ない」と発言するとともに、混乱を避けるため日銀名古屋支店を通じて現金手当てを行ったことを明らかにした[新聞 2]。また預金者へのアピールとして、本店の大金庫前に、日銀から輸送された大量の現金(高さ1m、幅5m)を窓口からも見えるように山積みした[新聞 4]。