2022年の税制改正大綱では「証拠書類のない簿外経費の必要経費不算入・損金不算入措置」が新たに設けられます。これは、税務調査で無申告を指摘された納税者、売上や経費の隠蔽や仮装を税務調査によって指摘された納税者に対し、税務調査後に提出する経費、いわゆる「後出し経費」を認めないというものです。

また、「帳簿の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置」も設けられます。これは、無申告や過少申告などが税務調査によって発覚し、調査官から帳簿の提出が求められた場合に帳簿の提出に応じなかったり、十分な記載を行わなかったりした場合にペナルティを課すというものです。

後出し経費とは、それまで帳簿に記載されていなかった経費を税務調査で無申告や仮装・隠蔽を指摘されたのちに、初めて主張することを指します。中には、本当に経費であった場合もあるかもしれません。しかし、税務調査での指摘を受けて課せられる追徴課税をできるだけ少なくしようと、所得を減らすためのウソの経費を申告するケースが少なくなかったのです。

経費の額を増やそうと税務調査後に大量の領収書を経費として提出する納税者もおり、提出された領収書が適正なものであるかを調査官が判別するための作業には膨大な時間と労力がかかっていました。

税制改正大綱では「適正な記帳や帳簿保存が行われていない納税者については、真実の所得把握に係る税務当局の執行コストが多大であり、行政制裁を適用する際の立証に困難を伴う場合も存在する。記帳義務の不履行や税務調査時の簿外経費の主張等に対する不利益がない中では、悪質な納税者を利するような事例も生じているところである。」としています。

つまり、後出し経費の調査には膨大なコストがかかり、さらに後出し経費を認めることによって悪質な納税者が得をするような事態を招いた事例も生じていたということです。このような背景から今回の税制改正では、無申告者や所得を適正に申告しなかった納税者に対する厳しい措置が取られることになったのです。