その後に判明したぶんを加えると、債務は総額3億5000万円にのぼるという。12月7日、ずっと音信不通だった一晃社長から、突如C社に一通の封書が届いた。
「『金策に奔走しております。ご容赦賜りますようお願い申し上げます』という“謝罪文”でしたが、連絡先も書かれておらず、時間を稼いでいるだけだと思います」(Bさん)
封書の消印は名古屋だったが、一晃社長の行方は現在もわからないままだ。そこで本誌が角氏を直撃したのが冒頭のシーンだ。12月上旬、午後8時すぎ。立つのはマウンドからカウンターの内側へ変わったが、本領を発揮する時間は不変だ。
「(息子とは)連絡はつかないよ。先月は連絡取れたけど、『みんなに頑張って返済する』って言うから、今月は取ってないんだよ」(角氏)

建築紛争の解決実績が多い齋藤拓生弁護士(つばさ法律事務所)が、こう解説する。
「一晃氏は、民事上の支払い義務や返還義務を負うことは当然です。さらに、事業が破綻することが確実な状況で取引を継続したとすると、一晃氏は詐欺罪に問われる可能性があります。また、角氏がT工務店の広告塔として使われていたことは明らかです。破綻が確実な状況で、角氏が広告塔となることを容認していたならば、不法行為責任を負う可能性がありますし、詐欺罪の共犯となる可能性もあります」
その後、弁護士を通じ、角氏から債権者や顧客に詫びる旨の回答があった。
「今般の内容を直近で知るに至って正直、心より動揺している次第であります。私は、対象会社の事業の運営には関与しておらず、株主、役員、社員でもありません。ただ、長男がおこなう事業ということもあり、少しでも営業の力になればと考え、宣伝部長と名刺に記載することを許諾したものでありますので、私の名前を見て信頼した皆様には、心より申し訳ないと考えております」
角氏が一晃氏から確認した債務は、約2億円だという。
「私も親として、すでに多額の資金援助をしておりますが、今後どのような支援ができるのか見定めていきたいと考えております」(角氏)

リリーフとは違って、この局面での“逃げ切り”は許されない。