>>313

欧州では冬季のエネルギー途絶の危険性について早い段階から警鐘が鳴らされてきたが、今冬のエネルギー需給は当初想定より緩和しており、乗り切れる可能性が高まっている。欧州天然ガスの価格指標であるTTF※1は秋口に入り急激に低下し始め、2022年11月上旬時点ではピーク時の3分の1程度の水準であるメガワット時あたり110ユーロで推移している。これは欧州では例年より温暖な気候が続いており暖冬が予想されること、アジアでの天然ガス需要が減退していることに加え、欧州指令を受けて各国がガス貯蔵を進めた結果、貯蔵施設がほぼ満杯になり液化天然ガス(LNG)受入が滞っていることなどが要因となっている。

しかし、市場環境の不安定さが構造的に改善されたわけではなく、綱渡りの状況であることに変わりはない。図1は欧州(EU27カ国+英国)の2021年と2022年の第3四半期(7-9月、3Q)における天然ガス需給バランスを示したものである。需要については欧州委員会のガス需要削減計画発表もあり域内消費が昨年比で5.6%減少した分が冬季ピークに向けた追加的なガス貯蔵に回っている。