http://www.sanspo.com/baseball/top/bt200512/bt2005122801.html
■記者の目
松井秀がWBCへの参加要請を断った。最初から結論があったわけではない。
出るべきか、否かと今シーズン後半からずっと頭を悩ませてきた。
野球における世界一の価値観を問われ、熟慮し、その答えが辞退という行動に表れた。
その大きな理由は、松井の目には最後まで、WBCが真の世界一を争う大会には映らなかったためだ。
 真剣勝負をうたいながらも耳に入ってくるのは球数制限など本来はありえない
特別ルールの存在。しかも世界一を争う大会に、メジャー随一のスター集団・ヤンキースの
主力で、出場に合意したのはデレク・ジーター内野手(31)らわずかに2人だけ。
大会直前に辞退するという噂も根強く残っている。サッカーのW杯に
レアル・マドリードやチェルシーの選手が出場しなかったら、大会の価値は半減するだろう。
 言葉にしてはいないが、松井の中でのWBCは日米野球のような商業的イベントに
等しいのではないか。もし仮に日米野球が3月に開催されたら、果たしてどれだけの選手が
参加するだろうか。WBCが真剣勝負よりも商業主義が強いイベントと変わりないと感じながらも、
主役に祭り上げられて利用されるのは本意ではなかったのだろう。
 イチローや大塚など他のメジャーリーガーが参加を決めたことで「野球人気の復興のためにも松井は出るべきだった」
など批判が起こることも予想される。しかしイベントで勝つよりもガチンコで松井が
世界一になる方が、日本野球を盛り上げる近道だと私は考える。(MLB担当・阿見俊輔)