1軍のレギュラークラスでなければ、監督はじめ首脳陣に相手にもされなかった西武時代。 ボクに言わせれば、“ゴミ以下”の扱われ方だったといってもいいでしょう。
そんなときに出会い、ボクをようやく人間扱いしてくれたのが、藤田監督でした。

ボクは一人でチーム宿舎内にある食事会場に向かいました。「ボクはそんなに食べません」というところをアピールしようと、急いでホイコーローだけかき込んで、部屋に戻ろうと思った、そのときでした。
背後に人影、そして「おい、デーブ」という声。藤田監督です。驚いたボクは「カ、カントク、お疲れさまです」というと、こんな言葉が返ってきました。

「なんだ、オマエ。これだけしか食べないのか。ダメだ。力が出ないだろ。きょうは、練習でも頑張ったんだから」
西武時代、練習なんかでホメられたことないボクにとっては、ある意味衝撃的でした。さらに、藤田監督は調理場に向かって…。
「シェフ、ステーキ2枚焼いてあげて」

呆然としているボクの前には、うまそうなステーキが出てきました。でも、ボクはまだ疑っていたのです。
『これはボクがどれだけ、やせる気があるかを試すテストだ。これを食ったら、ハメられる。試合に使ってもらえない…』 「肉はあまり食べないんで…」というボクに対し、藤田監督は「いいから食え、うまいか?」。
そこでやっと、プロ球界に入って初めて人情に触れたような 気がしました。西武時代の辛い思い出が走馬燈のように脳裏を駆け巡り、せきを切ったように涙があふれてきました。

「うまいです!」と叫ぶと、ボクは号泣しながらステーキにかぶりつきました。どれほど、うまいと思ったことか…。
このとき、ボクは、「藤田監督のために死のう」と、心に誓ったのです。

http://www.zakzak.co.jp/sports/baseball/news/20110818/bbl1108180938000-n1.htm