正解は、B病院。答えは、「ほぼ同じ」ではない。サンプルの数が少ないほど極端な値が出やすくなるから、「小病院のほうが多い」というのが正解。

「A病院では1万人、B病院では1人の赤ちゃんが生まれています」という前提であれば、気づく人も多いだろう。毎日1万人が生まれる病院では、赤ちゃんの6割以上が男の子だった日は、1年に1回もないかもしれない。一方、1人の赤ちゃんしか生まれない病院では、赤ちゃんの6割以上が男の子だった日は、1年のうち、ほとんど半数に及ぶだろう。

 サンプル数が少ないとバラツキが大きくなるのは当然だが、日常的には、私たちは、そんなことはお構いなしに判断している。

 カーネマンらは、人間によるこのような判断の単純化を総称して「簡便法(ヒューリスティックス)」と名づけた。人は、合理的に考えるのではなく、丸めて考えるということだ。

 学生に対するアンケートでは、「A病院もB病院もほぼ同じ」と間違えて答えた学生が45%いて、正解者数とほぼ拮抗している。