【桂春蝶の蝶々発止。】

若手の漫才日本一決定戦「M―1グランプリ2022」(18日、テレビ朝日系)は、腹の底から笑えました。ファイナリストはいずれも素晴らしいなか、優勝の栄冠に輝いたのはウエストランドでした。切れ味鋭い「ディスり漫才(毒舌漫才)」で、私も一番だと思いました。

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ユーチューバーに対して、「数年経って、これはこれで認めなきゃあなぁ…という風潮があるけど、やっぱりうざい!」「再生数に憑りつかれてマトモではない」「若いうちに大金を得てるからマトモではない」「警察に捕まり始めてる!」などとまくし立てました。

一部のお笑いファンにも、「ネタの分析とかしてくる、ウゼェお笑いファンとかいる」「ネタのアドバイスなんかしてくる」「それが、かいもく見当違い!」…。

これには、「お願い! もっと言ってくれ」って心から思いました。

とりわけ笑ったのは、小劇団について、「役者のヤツらはお互いの芝居を見に行くだけで、何の向上心もないんだから」「前売り5500円、高えよ!」とか、いわゆる「芸能界の片隅あるある」をしゃべるから、私たちにはたまらない。

小劇団の人たちが、言い当てられ過ぎて、ゲラゲラ笑ったんじゃないの~って思いましたね。

サンドウィッチマンの富澤たけしさんによる論評が秀逸でした。

「このネタで笑っちゃってる人は、気持ちのどこかにそれがあるということなので『共犯』です」

そう、ウエストランドは悪口を言っているようで、実は「大衆の共感」を探しているだけに過ぎないのです。みんなが思っていることでなければ、こんなにウケるわけがないのですから。そのセンスは群を抜いていると思いました。

ダウンタウンの松本人志さんをはじめとする審査員は、多くの大人が介入するメディア界を主戦場としています。そこでは、面白くても、炎上までは許されない「そつのなさ」を求められる。そんな時代に、よくぞここまで毒付いたもんです。ウエストランドの勇気に、審査員は加点したように思えてなりません。

落語家の立川志らく兄さんが「今の時代は人を傷つけちゃいけない笑いが主流。それが傷つけまくる。だからウエストランドが売れてくれたら時代が変わる、お笑いとは本来そういうものだから」と言っていましたが、まさにそう。

昔はどれだけ毒付いても、「芸人なんてマトモやない。アホ言うのは当たり前」と許された。ところが、現代はシャレが分からない連中がSNS内で警察化し、それに世間が同調してしまうので、芸人がアホを言えない時代になってしまいました。

ウエストランドは、そんな閉塞(へいそく)感漂うメディア界に、大きな一石を投じてくれたと思います。彼らのような芸人が売れる、それが本当の「多様性」なんじゃないのかなぁって、心から思いました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/463a81f83944da3c6b6ceba6396813c687ed6682