この枢機卿は欧州の社会主義を反共勢力の中に組み込むことに成功したと同時に、カトリックとユダヤ人(イスラエル)との関係確立に最も力を尽くした一人だった。このケーニッヒ周辺の人物にヨーゼフ・ラツィンガー(現教皇ベネディクト16世)がおり、さらにそのラツィンガーの愛弟子の一人が現在イスラエルから最も信頼を寄せられるカトリック・シオニストのクリストフ・シェンボルン枢機卿である。

 ヨハネ・パウロ2世誕生にまつわるこれらのすばらしい人物関係を見ていると、米欧ユダヤ(シオニスト)支配層の命を受けたオプス・デイとCIAによる実に臭い演出が透けて表れるのだ。その後の中南米とポーランドなどの東欧における勝共運動と「冷戦」の終結については第4部と第5部 で書いたとおりであり、繰り返すことはしない。

 故カロル・ヴォイティーワ教皇こそ「ミスター冷戦」の名にふさわしい。そして彼をこの時代の主人公の一人に仕立て上げたのがオプス・デイ、特にバチカン広報室長のホアキン・ナバロ・バジェスであり、この教団に極めて親しい教皇の個人秘書スタニスラフ・ジーヴィッツである。彼らが「冷戦構造」を盛り立てたうえで平和裏に解体した陰の立役者であろう。