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然る一方で、何故に或る人たちが、常に女性を目の敵にして、毒舌や侮辱をあえてするのだろうか。
(それによって彼等は、女嫌いと呼ばれるのである。)

けだしその種の人々は、初めから女に対して、単なる脂肪以上のものを、即ち精神や人格やを、真面目に求めているからである。
女がもし、単なる肉であるとすれば、もとより要求するところもなく、不満するところもないだろう。彼等もまた世間多数の男と同じく、無邪気に脂肪の美を讃美し、多分にもれない女好きであるだろう。

それ故に女嫌いとは?

或る騎士的情熱の正直さから、あまりに高く女を評価し、女性を買いかぶりすぎているものが、経験の幻滅によって導かれた、不幸な浪漫主義の破産である。

然り!すべての女嫌いの本体は、馬鹿正直なロマンチストにすぎないのである。

──萩原朔太郎『女嫌い』より