桜井さんの1~2メートル離れた右側のテーブルには、既に酔っているとみられる顔の赤い男性客2人がおり、左側にも外国人客が一人、いずれもマスクは着用せず飲食していたという。支配人含めスタッフが他の客にマスクの着用や会話の中止を要請することはなかった。

 ここで桜井さんは「他の客への迷惑という事実がでっち上げられるかもしれない」と危ぶんだ。頭に浮かんだのは「ホテルの人間が客の横に立ち続けて会話している状況は普通ではなく、隣の客から見ればその状況自体を迷惑と感じるかもしれない」という考えだ。そこで妻とともにラウンジの外に移動。その後もマスクを着けないでいると、支配人は最終的に「お帰りください」と言ってルームキーの返却を求めた。桜井さんはキーを返して帰宅。結局、客室には入っていない。

 厚生労働省が5月に出した関係各所への事務連絡文書では、屋内であっても「他者との距離が確保でき、かつ会話がほとんどない場合は、マスク着用は必要ない」と書かれている。

 桜井さんはこうした状況も踏まえた上で、SNSで「マスク着用を強要された」とホテルを批判。チェックイン時やラウンジに入る際には着用を求められなかったことや、他の客もノーマスクでロビーを歩き、ラウンジで飲食をしていたことを挙げ、「スタッフに声を掛けられた時、私は一人無言で食事を取っていただけです。支配人には料理の取り分けを終えて妻と食事を始めてからマスクを着けろと言われたのです」と振り返る。 
 SNSでこの件を知った弁護士の福永克也さんは、たまたまウェスティンに10月に宿泊予定だったため、メールでホテルにこう問い合わせた。「マスク着用は協力のお願いなのか、義務なのかお答えください」

 するとホテル側は「館内でのマスク着用は強制ではございません。もしゲストより着用できない、着用を希望しないとの申し出があった場合で他のお客さまがいる場合は、ソーシャルディスタンスをお取りいただくようにお願いしております」と回答した。