茨城県笠間市小原にあるJR常磐線の踏切で電車と軽乗用車が衝突した事故で、命を落としたのは中学入学を控えて制服を買いに行く途中の母子だった――。残された父が8日、2人の仲の良さを毎日新聞に明かし、悲痛な思いを語った。

【写真・図】事故があった当時の踏切の状況

 ◇「妻は息子が中学生になるのを楽しみに」

 事故が起きたのは6日午前8時ごろ。県警笠間署は7日、死亡したのは軽乗用車を運転していた近くのパート従業員、高安照美さん(50)と後部座席にいた息子の規稔(のりとし)さん(12)=小学6年=だったと発表した。死因は脳挫傷だった。

 「私なんかではまねできないぐらい、10倍、20倍、息子をかわいがっていた」。夫、庸二郎さん(55)から見た照美さんだ。学校の冬休み中は毎日パート先から一旦帰り、長男で一人っ子の規稔さんと昼食を共にしていた。規稔さんも母親を慕っていたという。

 2人は6日、近くの呉服店で制服を買うために自宅を出た。照美さんの発案で、パートが終わる夕方には3人で通学用の自転車を買うはずだった。

 現場は約20メートルの「中州」のような車道を挟んで上下線にそれぞれ踏切があり、警報機と遮断機が独立して動いている。2021年12月に下り線で乗用車と列車が衝突した死亡事故もあり、家族で「気を付けないといけないね」と話していた。

 照美さんの車は「中州」から上り線の踏切に入って事故が起きた。7、8日の同じ時間に現場を確認した庸二郎さんは「何かの拍子でブレーキから足が外れたか、(踏切内にいると錯覚して)抜けようと慌ててアクセルを踏んでしまったとしか考えられない」と語る。

 事故後、照美さんのスマートフォンを見ると大切な制服を買う日を決めるためか「運気が上がる日」を検索していた。「息子が中学生になるのを本当に楽しみにしていたんです」。そう妻の胸の内を思い、言葉を詰まらせた。