平日は調教、休日はレース。基本、家にはあまりいなかった父ですが、その日はなぜか家にいて突然こんなことを言ってきました。

 父「お父さん今日、授業参観に行くから♡(満面の笑みで)」

 私「!?!?!?」

 どうやら母から参観日の話を聞いた様子。当時、京都で有名人だった父が学校に来たら迷惑になるかも…と思って母は止めたようですが、父は案の定、聞く耳を持たず。行く気満々、ウキウキで私にそう言ってきたのです。

 とはいえ、当時の父はオルフェーヴル並みの気性難。本当に来るのかなぁと疑問に思いながらも、友だちに「なんか今日、お父さんが授業参観に来るらしい」と話したところ、瞬く間にウワサが広がり、他のクラスはもちろん、先生にまで「今日、お父さんが来るって聞いたけど本当?!」と質問をされるほどに。


そして、午後の最後の授業あたりで全身黒のスーツ&コート、そしてサングラスを身にまとい、父は颯爽と学校にやって来たのです。調教師時代に「黒の軍団」と言われていた父ですが、昔からオールブラックのコーディネートを好んで着ていて、この日もヴェルサーチだったか、萩原健一さんとお揃いのイン&ヤンでバッチバチに決めて登場。生徒、先生、保護者の方の視線が父に集中し、小学校の廊下がランウェイに変わった瞬間でした。

 授業中は静かに参観してくれて、授業後も待ってくれた父。今思えば、気性難なのによく道中、無事に耐えてくれたなあと思います(笑い)。帰りは、ロングコートをなびかせて歩く父の後ろを私と母が小走りでついて行き、その後ろにはザワついた野次馬の生徒たちが続くという状況。最後は学校の門に生徒が群がる中、父がこれまた颯爽とタクシーを止め、風のように立ち去ったのでした。
 
 かなり非日常な参観日の出来事でしたが、格好や身のこなしなどちょっと決めすぎではあるものの、改めて父は他の人と違うんだなあ、かっこいい人なんだなあと子供ながらに思いました。父のことをちょっぴり誇りに感じた一日でした。(ワイン沼ライター・奈奈)


そらこんなことあったら大好きになるよね