古沢 
家康には魅力を感じていましたが、ただ家康を賛美したいわけではなくて。
1年間どんなドラマだったら面白いかを考えたときに、家康公の人生をお借りしたいなと。
戦国時代の面白さは、常に死と隣り合わせで生きるか死ぬかの究極の選択を迫られること。
毎回ハラハラドキドキするようなサバイバル物語になるなと思ったんです。

有働 
早速、第1話のタイトルが「どうする桶狭間」ですもんね。
いまはウクライナ戦争が長期化し、日本も物価高など先行きの見えない世の中ですが、意識されますか。

古沢 
意識せざるを得ないですよね。
長らく戦国時代って、誰が天下を取るのか、ロマンありきで描かれてきました。
でも、僕らは今、街に爆弾が落ちたり、地下シェルターで子どもが泣いている姿を、携帯ひとつで身近なこととして感じられる。
殺し合いの戦国時代を、従来のように描くのは厳しいですね。

有働
それは分かるなあ。

古沢 
織田信長・豊臣秀吉・徳川家康の戦国三英傑が幸せだったとは思えないんです。
家康は好んで、あの時代に、弱小国のプリンスとして生まれたわけではない。別に天下を取りたいわけでもなかったと思います。
必死に悩み、もがき、半ベソをかきながら、信長や秀吉をはじめとするモンスターたちに食らいつき、命からがら乱世を生き延びていった。
そんな誰もが共感しうる現代的なヒーローなのではないかなと。