「肩の強さはハンパじゃないな」

 その瞬間、日本ハムの首脳陣からは、こんな声も上がった。

 すでに行われている新人の合同自主トレ。投打の二刀流で注目されるドラフト1位ルーキーの矢沢宏太(日体大)が90メートルぐらいの遠投を始めたときのこと。左腕から繰り出される矢のような球筋に、近くで見ていたコーチたちは一様に驚きの声を上げたのだ。

 地肩が強いというだけではない。首脳陣はその脚力にも驚かされたという。

 昨年の大学日本代表合宿では野手で2、3人、足で目立つ選手がいたが、矢沢のスピードと脚力は彼らよりひと回りもふた回りも上だったとか。自主トレで軽めのランニングながら、その片鱗をのぞかせたようだ。

 矢沢の1位指名を球団に強くプッシュした新庄監督(50)が、「足が魅力」と話していただけのことはありそうか。

「走る姿はもちろん、歩き方や足の運びからして、全身バネ。動きにもキレがあるというのが首脳陣の見立てです。あれだけ地肩が強く、脚力も抜けているだけに、多少のミスには目をつぶって外野のポジションをひとつあける可能性まで出てきたんじゃないか。体力もかなりあると聞きましたから。五十幡亮汰(24)に加えて、もうひとり俊足の選手が打線に加われば、機動力も使いやすい。肩が強くて俊足という新庄監督好みの選手でもあるし」(日本ハムОB)

 ブルペンで投球練習を行ったあと、野手の練習に取り組むなど、本人は二刀流にチャレンジしているものの、「スタートは外野手でしょう。ブルペンではすでに立ち投げで強いボールを投げていますけど、細かいコントロールが課題といいますからね。とりあえず野手に軸足を置いて、実戦で良ければリリーフ起用も視野に入ってくるかもしれません」とは前出のОB。

 自主トレの段階で「外野のポジションを取るかもしれない」といわれるくらいだから、最下位からの浮上を目指す日本ハムに楽しみな新人が入ったことだけは間違いなさそうだ。