今はたこ焼き屋を営む傍ら、地元の将棋教室のコーチを勤めている。
暖簾の屋号の文字は十八世名人、森内俊之の手によるものだ。
「いらっしゃい」。古市駅*2東口から歩いて3分。
「たこ焼き 鬼畜眼鏡」のえび茶色の暖簾をくぐって店内に入ると白いタオルを
頭に巻いた羽生善治さんと妻、理恵*3さんの元気な声に迎えられた。
「去年の4月にオープンしました。暖簾の『鬼畜眼鏡』という文字は森内さんに書いて
いただいたものだし、開店に合わせてスポーツ紙やテレビでも取り上げてもらった。
おかげで、県外から足を運んでくださるお客さんが多かったのはうれしかったですね」
羽生さんは本当に嬉しそうに、僕たちに語ってくれた。
とはいえ、その分、プレッシャーも大きかったという。
「たこ焼き好きは飛行機に乗って本場・大阪まで食べ歩きに出かける時代でしょ。
ボクが修業した難波の老舗『わなか』のものは白味噌がベースなのが特徴だから醤油
築地銀だこのような揚げたこ焼きだと信じ込んでる関東人にはモノ足りないようなんです。
それで怒られちゃったこともあるけどそれも修業のうち。我慢、我慢です」
かつてのライバルで現五冠*4の藤井聡太について尋ねると…
「知ってます?23歳までは僕の方が(通算勝利数)上だったんですよ?」と、おどけ
「俺も怪我さえ無ければって…歯がゆいですけど」
「今はもう現役に未練はありません。今度はこの、たこ焼きで日本一になれるよう、
がんばるだけです!」
(写真)たこ焼きを手に持つ藤浪さん