ちな五ノ井さんが受けたセクハラ被害

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五ノ井さんが配属された東北方面の中隊は、隊員58人の中で女性は5人。1人は育休中だったので、実質的に女性隊員は4人しかいなかった。同部屋の女性隊員からも「セクハラは覚悟して」と言われたので警戒はしていたものの、すぐにそれが現実のものとなった。

「2020年秋ごろ、勤務中に、男性隊員が『柔道しようぜ!』と言いながら技をかけてくるのですが、腰をつかまれて“バック”のような体制にされて腰を振ってくるんです。それを女性隊員が目撃していました。廊下を歩いていると、急に抱きつかれることも日常的にありました」(五ノ井さん)

部屋に戻ると、女性隊員同士でこうした行為を報告しあった。だが女性隊員は圧倒的少数。自分の身を守るだけで精いっぱいの場合もある。

2021年6月24日。山に入って訓練をしていた時、新人の五ノ井さんは夕食や酒のつまみを作る役割を任されていたので、天幕で料理を作っていた。天幕とは2~3人用のテントのことで、山での訓練では寝床として使用されていた。天幕で酒盛りをし、定員より多い男性隊員が入れ代わり立ち代わり入ってきて、多いときには5、6人くらいの隊員がぎゅうぎゅうになって座っていた。料理を作るためにいた五ノ井さんはその輪の中に入れられ、胸をもまれ、キスをされ、男性隊員の陰部を下着越しに触らせられた。

逃げられないと思った五ノ井さんは、別の天幕にいる女性隊員にLINEで「はやく来てください」と助けを求めた。女性隊員からは「オオカミなってる??w」と返事がきた。「オオカミ」とは、男性がお酒を飲んで暴走し、理性をコントロールできない状態のこと。
「はい」と返せば、女性隊員は助けに来ないと思い、五ノ井さんは「なってません とりあえず早く来てください」と再度助けを求めた。だが、その女性隊員は「今来たらやばい」という別のLINEも受け取っていたことから、結局、五ノ井さんのいる天幕には来なかった。女性隊員はその直後に退職した。