これはたとえばの話だけど。
ある日、翼あるひとびとがグレタガルドの白い空を埋めつくしたんだ。

天地の半ばに羽根の舞う 雪花のごとく繽紛と
慈悲なき鏃の降りそそぐ 羽根のまにまに繽紛と
燃える礫の降りそそぐ  羽根のまにまに繽紛と
草葺き屋根の里が焼け ポプラ木立の邑が焼け
世界の底を逃げまどう 無辜なる民の靴の音
石の街路を駆けぬけて 荒れた畷を駆けぬけて
世界の底を逃げまどう 馬のひづめの轟きよ
エルフの森の王国もドワーフ造りの山の砦も機械仕掛けのノームの城も
猖獗極まる侵寇の波涛の呑まれて隊伍散る
戦火の汀に立たされた人の子たちの負け戦
翼の泊まる空の下堅牢堅固も過去の栄誉か終焉迫る城塞都市
聖なる騎士さえ堂に入り円蓋の下神よと祈った
宮廷道化は楼閣のぼり蝋の翼で飛ばんと嘯く
陰に潜んだスラムの王は武器を鎧って空を睨んだ
暗き洞棲む妖術使いは闇を纏って機を待った

ほら、空ってどこにでも繋がってるよね。
どこへ逃げたって敵はその白い翼でどこまでも追っかけてくる、だけど僕たちには翼がないんだ。
だから、どこにも繋がってない空を求めていた。
そんな願いが通じて、いま彼らはとてものどかな国でジングルベルを聴いていた―

これはたとえばの話だけど。
僕らが君に語るのは、たとえばそんなメルヘン。