ルドルフは負けなかった。土つかずの四連勝を果たした。この燦然と輝く成績と、まだ果てしない可能性を秘めているとしか思えない雰囲気が、和田氏や野平氏やボクを奮い立たせた。つまり、ルドルフを囲む人間たちは、この馬が示し始めた限りない飛躍への意志の前で、喜びに浸るだけでいることを許されなかったのである。
ルドルフは、ボクたちにサラブレッド・レースの奥深さ、恐しさ、そしてそのかなたにある喜びを教えようとしていた、とボクは思う。
舌を巻くほど賢い馬だ。競馬の恐しさのさ中で生きながら、ルドルフだからこそ勝利の後の恍惚と、いつか奈落の底に落ちるかもしれない不安を二つ、その頭脳で感じていたはずだから。